「『はりぼて』を配信で観たい」「あれは実話なの?」「14人も辞めたあと、その後どうなったの?」——この映画を探して検索した方に、先に結論をお伝えします。
『はりぼて』は配信で観られます。そして、すべて実話です。 富山県の小さなテレビ局が政務活動費の不正を報じ、半年のうちに市議14人が辞職に追い込まれたという、実際に起きた出来事の記録です。
ただ、この映画の本当の見どころは「14人が辞めた」ところではありません。その後を3年間追いかけたところにあります。そこがこの作品を、痛快な調査報道ものではなく、後味の悪い傑作にしています。
『はりぼて』とはどんな映画か
2020年8月16日に公開された、チューリップテレビ(富山県の民放局)製作のドキュメンタリー映画です(100分)。監督は同局の記者だった五百旗頭幸男(いおきべ ゆきお)さんと砂沢智史さん。
発端は2016年8月のスクープでした。市議の政務活動費——議員の調査研究などに使われる公費——の使い道に、事実と異なる報告があることを突き止めます。そこから不正が芋づる式に発覚し、半年のうちに14人の市議が辞職しました。地方局の調査報道としては異例の成果で、日本記者クラブ賞特別賞などを受賞しています。
映画は、そのスクープの舞台裏と、その後の3年間を追いかけたものです。
配信で観る方法
| 観る方法 | 取り扱い |
|---|---|
| 動画配信(サブスク) | あり(U-NEXTなどで配信) |
| 自主上映会 | あり(各地で継続中) |
| 劇場での再上映 | 特集上映などで随時 |
※2026年7月時点。配信サービスの取り扱いは入れ替わりが多いため、最新の状況はFilmarksの配信状況ページでご確認ください。各サービスの「見放題」と「レンタル(有料)」の区別も、そちらが確実です。
『人生フルーツ』のように「配信もDVDもない」という作品ではないので、今夜すぐ観たい方は配信でどうぞ。
何が起きたのか(前半のあらすじ)

物語の前半は、記者たちが不正を突き止めていく過程です。
領収書を1枚ずつ照合し、印刷会社に確認を取り、議員本人に問いただす。やっていることは地味な確認作業の積み重ねですが、そこから出てくる議員たちの反応が、この映画をドキュメンタリーとして成立させています。
弁明し、逆ギレし、涙を流し、そして辞めていく。14人が次々と去っていく様子は、たしかに劇的です。もしここで映画が終われば、「地方局が悪を暴いた」という気持ちのいい話でした。
しかし監督たちは、そこで終わらせませんでした。
「その後」——この映画のいちばん怖いところ
※ここから先は、映画後半の展開に触れます。まっさらな状態で観たい方は読み飛ばしてください。
14人の辞職を受けて、富山市議会は政務活動費について「全国一厳しい」といわれる条例をつくりました。ここまでは、よくある「事件のあとの改革」の話です。
ところが3年半が経ち、カメラが再び議会を訪れると——不正が発覚しても、議員が辞めなくなっていました。
厳しいルールはできた。監視の目もある。それでも、開き直って居座るという選択肢が残っていた。あれだけの騒ぎがあり、14人が辞め、条例まで変えたのに、根っこのところは戻ってしまう。
この映画のタイトルが『はりぼて』であるのは、議員だけを指しているのではないのだと、ここで分かります。
ラストについて
そして、カメラは最後に自分たちの側へ向きます。
詳細は書きませんが、ラストで映されるのは監督である五百旗頭さん自身です。「14人の市議を辞職させた『かっこいい』テレビ局として終わらせてはいけない」——それが監督と共同監督の砂沢さん、カメラマンの西田豊和さんに共通した思いだったと語られています。
自分たちの恥もさらけ出す。その一点があるために、この作品は「他人を糾弾する映画」になっていません。観終わったあとに残るのが、怒りではなく居心地の悪さなのは、そのためだと思います。
公開から6年、現実の「その後」はどうなったか
映画の外側の話も、2026年時点で分かる範囲でまとめておきます。
- 政務活動費の公開は続いています。 富山市議会は不正発覚後に始めた透明化を今も続けており、政務活動費の収支報告書と領収書は富山市の公式サイトで誰でも見られます。2026年7月にも前年度分の領収書の公開が始まりました。
- 五百旗頭監督は、その後も「議会」を撮り続けています。 石川県政を追った『裸のムラ』(2022年)に続き、能登の穴水町議会を描いた『能登デモクラシー』(2025年5月公開)を発表。同作は第25回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」の草の根民主主義部門大賞を受けました。
『はりぼて』が突きつけた「制度をつくっても、人は変わるのか」という問いの続きは、公開された領収書のなかに、いまも誰でも確かめにいける形で残っています。
自主上映会で観る
配信で観られる作品ですが、『はりぼて』は自主上映会でもよくかかります。市民団体や公民館の企画で、上映後に語り合う会が開かれることも多い作品です。ひとりで観ると気が滅入る映画なので、正直、誰かと観たあとに話せる上映会のほうが向いているかもしれません。
てんぐシネマ倶楽部では、東京・埼玉・神奈川・山梨の自主上映会情報を毎日自動で集めています。『はりぼて』の上映会が見つかっている場合は、以下に表示されます。
東京・埼玉・神奈川・山梨で予定されている上映会0件(2026年9月13日時点)
いまのところ、1都3県で予定されている上映会は見つかっていません。このリストは毎日自動で更新されるので、 少し時間をおいてまた確認してみてください。
全国の上映会は映画『はりぼて』公式サイトで確認できます。近くで開かれていないときは、自分で上映会を開くという方法もあります。
1都3県で見つかっていないときも、このリストは毎日更新されるので、時間をおいて確認してみてください。
もう一歩踏み込みたい方へ:「政務活動費」とは何か

この映画の中心にあるのは、政務活動費という制度です。ここが分かっていると、映画の見え方がかなり変わります。
ごく簡単に言うと、政務活動費は議員の調査研究などのために、議会の会派や議員に交付される公費です。根拠は地方自治法100条14項。そして重要なのは、次の点です。
- 交付するかどうかも、金額も、何に使えるかも、法律には書かれていない
- それらはすべて、その市の条例で決まる
- 条例をつくり、変えられるのは、議会自身
つまり、ルールを決める側と、お金を受け取る側が同じなのです。映画の後半で「厳しい条例をつくったのに元に戻る」のを観たとき、この構造を知っていると、あの居心地の悪さの理由がはっきりします。
制度そのものを条文からきちんと知りたい方は、政務活動費とは(議会のちから)をどうぞ。地方自治法の条文にもとづいて解説されています(当サイトと同じ運営者による、制度解説の姉妹サイトです)。
作品データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公開 | 2020年8月16日 |
| 上映時間 | 100分 |
| 監督 | 五百旗頭幸男/砂沢智史 |
| 製作 | チューリップテレビ |
| 公式サイト | haribote.ayapro.ne.jp |
| 主な受賞 | 日本記者クラブ賞特別賞(もとになった一連の調査報道に対して)ほか |
よくある疑問
実話ですか?
すべて実話です。 俳優は出てきません。映っているのは実在の議員、実在の記者、実際の議会の様子です。2016年から2020年にかけて富山市で実際に起きたことの記録です。
富山県以外の人が観ても面白いですか?
むしろ、そこがこの映画の要点だと思います。作中で描かれるのは「富山市の特殊な事情」ではなく、どこの地方議会にもありうる構造です。「うちの市はどうなんだろう」と考え始めたら、この映画は成功しています。
重い映画ですか?
テーマは重いのですが、前半はかなり笑えます。 議員たちの弁明があまりに苦しく、思わず笑ってしまう場面が続きます。その笑いが後半で反転していく作りになっているので、身構えずに観始めて大丈夫です。
監督のその後は?
五百旗頭監督はその後も地方政治のドキュメンタリーを撮り続けています。石川県政を追った『裸のムラ』(2022年)、能登の町議会を描いた『能登デモクラシー』(2025年・早稲田ジャーナリズム大賞 草の根民主主義部門大賞)と、一貫して「議会と民主主義」がテーマです。『はりぼて』が気に入った方は、そちらもどうぞ。
まとめ

- 『はりぼて』は配信で観られる(最新の取り扱いはFilmarksで確認)
- すべて実話。富山市議14人が半年で辞職した実際の出来事
- 見どころは辞職劇ではなく、「その後」の3年間。厳しい条例をつくっても元に戻っていく過程
- ラストでカメラは制作陣自身に向かう。だから糾弾の映画になっていない
- 自主上映会でもよくかかる作品。誰かと観て話すほうが向いている
痛快な話を期待して観ると、確実に裏切られます。でも、観たあとに自分の住む街の議会を検索してしまう——そういう力のある映画です。
同じく地域や社会を見つめたドキュメンタリーとして、『人生フルーツ』や『夢みる小学校』の記事もどうぞ。上映会を探すなら上映会一覧から。
