自主上映の上映権料は、1回あたり3万〜6万円が中心です。 ただし「相場はいくら」と一言では答えられません。作品によって料金の決まり方そのものが違うからです。
一律で3万3千円の作品もあれば、入場者数×500円で青天井になる作品も、入場無料なら約9千円のDVD代だけで開ける作品もあります。同じ「5万円」と書いてあっても、83人までなのか150枚までなのか、1日1回なのか何回でもなのかで、実際に払う額は変わります。
この記事では、8つの配給元・権利元が公開している上映料の実額を並べ、料金体系を6つのタイプに整理しました。自分が開きたい規模なら、どの作品がいくらになるのかが分かるようにしています。
※金額はいずれも2026年8月時点で各公式サイトに公開されているものです。料金は改定されることがあるため、申し込み前に必ず各配給元の最新情報をご確認ください。
映画の上映権はいくら?相場は1回3万〜6万円

自主上映でよく使われるドキュメンタリー作品の上映料は、1回あたり3万〜6万円が中心帯です。まず全体像を早見表で示します。
| 価格帯 | どんな作品か | 例 |
|---|---|---|
| 約9千円 | 非営利・入場無料に限った特例 | 荒野に希望の灯をともす(DVD購入のみ) |
| 2万〜3万円台 | 一律制の小規模向け/学校向け | 美味しいごはん、cinemoの下限、学校主催の夢みる小学校 |
| 5万〜6万円 | もっとも多い中心帯 | 夢みる小学校、ゆめパのじかん、コスタリカの奇跡、ガイアシンフォニー |
| 8万〜16万円 | 大規模・行政主催・フィルム上映 | アップリンクの300人以上、行政主催、ガイアシンフォニーのフィルム上映 |
| 数十万円〜 | 劇場公開作品・話題作 | 個別見積もりになることが多い |
この幅を「作品の人気の差」だと思うと見誤ります。実際には、同じ5万円でも適用条件がまったく違うのが自主上映の料金の特徴です。次の章でその仕組みを整理します。
なお、上映料は単なる貸出料ではなく、製作者が次の作品をつくるための資金でもあります。安く開く工夫は大切ですが、正規のルートで払うこと自体が映画文化を支えている、という前提は押さえておきたいところです。
上映料の決まり方は6タイプある

上映料が比べにくいのは、金額の差ではなく料金体系の型が違うからです。公開されている料金を整理すると、大きく6つのタイプに分かれます。
| タイプ | しくみ | 実例 |
|---|---|---|
| ①一律・定額 | 人数に関係なく1上映いくら | 美味しいごはん 33,000円 |
| ②一律+超過課金 | ◯人までは定額、超えたら1人いくら | 夢みる小学校 5万円/84人以上は600円×来場者数 |
| ③定額と人数課金の高い方 | 両方を計算して高いほうを払う | cinemo、コスタリカの奇跡、ゆめパのじかん |
| ④最低保証+歩合 | 最低額を保証し、興行収入の一定割合を払う | アップリンクの有料上映(興収50%) |
| ⑤無料上映と有料上映で別体系 | 入場無料か有料かで料金表が変わる | アップリンク、荒野に希望の灯をともす |
| ⑥年間ライセンス/見積もり制 | 年契約で複数本、または個別見積もり | cinemoの年間ライセンス、人生フルーツ |
読み解きのポイントは3つです。
「◯人まで一律」の作品は、人を集めるほど得になります。 夢みる小学校は83人まで5万円なので、20人でも80人でも払う額は同じです。1人あたりの負担は集客に反比例して下がります。
「高い方」タイプは上振れに注意が必要です。 ゆめパのじかんは最低保証5万円ですが、入場者200人なら200×500円で10万円になります。想定より人が来たとき、上映料も一緒に増えます。
「歩合」タイプは売上と連動します。 アップリンクの有料上映は最低保証5万円に加えて入場料収入の50%。1,000円×200人=20万円を売り上げたなら、その50%相当を支払う形です。集客が読めないうちは、収入と連動するぶん赤字リスクは小さくなります。
配給会社・作品別 上映料の実額一覧
ここからが本題です。各配給元・作品の公式サイトに実際に公開されている金額を並べます(2026年8月時点)。金額の裏づけが取れたものだけを載せ、非公開のものは「見積もり」と明記しています。
配給会社・プラットフォーム
| 配給元 | 上映料 | 型 |
|---|---|---|
| cinemo(ユナイテッドピープル) | 1日あたり2万〜5万円(税別)または600円(税別)×参加者数の、高いほう。年間ライセンスは月額換算1万円(税別)から | ③⑥ |
| アップリンク(無料上映) | 300人未満 50,000円/300人以上 80,000円(いずれも税別・8日間2回まで)。3回目以降は1回ごとに15,000円追加。学校の授業での使用は20,000円 | ⑤ |
| アップリンク(有料上映) | 最低保証 50,000円(税別)+入場料収入の50%。2本目以降は30,000円(税別) | ④ |
| 日本電波ニュース社 | 非営利上映はライブラリー価格DVDの購入のみで追加料金なし(申請が必要)。有料上映は客席50席以上で50,000円+税(回数不問・1日あたり)、一般客100人超過分は別途 | ⑤ |
作品別
| 作品 | 上映料 | 型 |
|---|---|---|
| 美味しいごはん | 33,000円(1上映あたり・規模問わず一律・税込)。2回上映なら66,000円 | ① |
| 夢みる小学校 完結編 | 個人・NPOは50,000円(税込・来場83人まで)、84人以上は600円×来場者数。学校・教育委員会は30,000円(人数不問)。行政は1上映100,000円/2上映150,000円(税別) | ② |
| ゆめパのじかん | 1日の最低保証50,000円(税込)。入場者数×500円が上回ればそちら。2日目以降は30,000円 | ③ |
| コスタリカの奇跡 | 最低保証55,000円(税込)または動員人数×660円(税込)の、高いほう | ③ |
| ガイアシンフォニー(デジタル) | 150枚まで60,000円(税別)、151〜200枚は450円×販売枚数、201枚以上は90,000円。第九番のみ151枚以上は450円×枚数 | ② |
| ガイアシンフォニー(フィルム) | 第一番〜第六番は1回100,000円、2回以上160,000円(いずれも税別) | ② |
| 荒野に希望の灯をともす | 非営利上映はライブラリー価格DVD 8,910円の購入のみ。有料上映は50,000円+税 | ⑤ |
| 人生フルーツ | 見積もり制(料金は非公開) | ⑥ |
この表から見えてくることが3つあります。
1つめは、中心帯は5万円前後だが、下は9千円から上は16万円まで開いていること。予算が限られているなら、まず一律制か非営利枠のある作品から探すのが早道です。
2つめは、学校・行政が主催すると料金表が変わること。夢みる小学校は学校主催なら人数不問で3万円、逆に行政主催なら10万円からです。自分がどの区分にあたるかで、見るべき数字が変わります。
3つめは、同じ作品でも上映素材で変わること。ガイアシンフォニーはデジタル上映なら6万円、フィルム上映なら10万円からです。
気になる作品が決まっているなら、各作品の記事にある「上映料シミュレーションボタン」から、その作品の料金が入った状態で収支を試算できます。まだ決まっていない場合は、中心帯の5万円で試してみてください。
上映料を入れた状態で開きます。会場費やチケット代はあとから変えられます。
上映料5万円・チケット1,200円を入れた標準的なケースです。会場費や機材費はあとから変えられます。
無料上映なら上映料はかからない?

入場無料にしても、上映料は原則かかります。 ここはもっとも誤解の多いところなので、2つの話を分けて整理します。
法律上の話:3条件をすべて満たせば許可はいらない
著作権法38条1項は、①営利を目的としない、②観客から料金を受けない、③出演者等に報酬を払わない——この3つをすべて満たす上映を、許可なしでできると定めています。3条件を満たすなら、法律上は上映権の許諾も上映料も必要ありません。
ただし条件はかなり厳しく、文化庁の解説では「会場費に充てるだけの実費徴収」も②の料金にあたるとされています。名目を参加費・会費・協力金・資料代のどれに変えても同じです。詳しくは映画の上映に許可はいる?にまとめました。自分のケースをすぐ確かめたい方は、質問に答えるだけの上映許可かんたん診断をどうぞ。
実務上の話:配給元の運用は作品ごとに違う
法律の例外に当てはまるかどうかとは別に、配給元が独自に「無料上映の料金表」を持っているケースが多くあります。
| 作品・配給元 | 入場無料のときの扱い |
|---|---|
| アップリンク | 無料上映でも料金が発生(300人未満50,000円/300人以上80,000円・税別) |
| ゆめパのじかん | 入場料が有料でも無料でも計算は同じ(入場者数×500円が最低保証を超えればそちら) |
| 日本電波ニュース社 | 非営利上映なら、ライブラリー価格DVDの購入のみで追加料金なし |
日本電波ニュース社が定める「非営利上映」の条件は具体的で、参考になります。主催者が非営利団体または非営利目的の個人であること、入場無料または資料代等が1,000円以下でありその総額が開催実費を上回らないこと、会場の収容人員が大規模でないこと——この3つです。
つまり「無料だから安い」ではなく「作品によっては無料枠がある」が正確な理解になります。予算を抑えたいなら、無料にすること自体より、無料枠を用意している作品を選ぶほうが効きます。
上映権料のほかにかかるお金

上映料だけで予算を組むと足が出ます。公式サイトに記載のある実費を挙げます。
| 費目 | 実例 | 負担 |
|---|---|---|
| 上映素材の返送料 | ほぼすべての作品で主催者負担。往路は配給元負担が多い | 主催者 |
| 宣伝物の配送料 | ガイアシンフォニーは1梱包1,100円(全国一律) | 主催者 |
| チラシ・ポスター | ゆめパのじかんはB5チラシ100枚500円、B2ポスター1枚300円 | 主催者 |
| パンフレット仕入 | ゆめパのじかんは委託価格640円/冊(販売800円)。ガイアシンフォニーは50冊未満の配送が1,300円(税別) | 主催者 |
| 講演・トーク | ゆめパのじかんは講演料1日30,000円(税込) | 主催者 |
| 会場費 | 公民館は数百円〜数千円、市民ホールは1万〜5万円 | 主催者 |
| 機材レンタル | プロジェクター・スクリーン・音響で1万〜3万円程度 | 主催者 |
上映料5万円の作品でも、総額は7万〜10万円程度になるのが現実的な見立てです。会場・機材・告知の相場は自主上映会とは?完全ガイドで詳しく扱っています。
手元の条件で総額と損益分岐点を出すなら、収支シミュレーターに6つの質問に答えるだけで「何人集めれば赤字にならないか」が出ます。
見積もりの取り方と、費用を抑える3つの方法
見積もりの取り方
料金が非公開の作品も少なくありません。問い合わせのときに次の5点を書いておくと、一往復で見積もりが返ってきます。
- 開催希望日と会場名(近い日程・地域での重複を確認されるため)
- 会場の収容人数
- 入場料を取るかどうか、取るならいくらか
- 主催者の区分(個人・市民団体・NPO・学校・行政・企業)
- 1日に何回上映したいか
申し込みの期限にも幅があります。美味しいごはんは6か月先まで受け付け、上映予定日の2週間前が締切です。会場を押さえてから動くと間に合わないことがあるため、作品と会場は並行して進めるのが安全です。
費用を抑える3つの方法
1. 非営利枠のある作品を選ぶ。 入場無料で開けるなら、荒野に希望の灯をともすのようにDVD代のみで済む作品があります。もっとも効果の大きい選択です。
2. 1日に複数回上映する。 ゆめパのじかんは1日に何回上映しても基本上映料は同じ50,000円です。アップリンクも8日間で2回までが基本料金に含まれます。1回あたりの単価を実質的に半分にできます。
3. 主催者の区分を確認する。 学校や教育委員会が主催なら、夢みる小学校は人数不問で30,000円です。複数本を続けて上映する予定があるなら、リピート割引(夢みる小学校は40,000円から)やcinemoの年間ライセンス(月額換算1万円・税別から)も検討に値します。
よくある質問
Q. 市販のDVDやレンタルDVDを買えば、上映会で使えますか?
A. 使えません。市販・レンタルのDVDは家庭内での私的利用が前提です。人を集めて上映するには、配給元から上映用の素材と許諾を受ける必要があります。詳しくは映画の上映に許可はいる?をご覧ください。
Q. 入場無料にすれば、上映料はかかりませんか?
A. 原則かかります。著作権法38条1項の3条件(非営利・無料・無報酬)をすべて満たす場合は許可も上映料も不要ですが、条件は厳しく、会場費に充てる実費徴収でも条件から外れます。また配給元が独自に無料上映の料金表を持っていることも多く、アップリンクは無料上映でも50,000円からです。
Q. 1日に2回上映したら、上映料は2倍になりますか?
A. 作品によります。ゆめパのじかんは1日に何回上映しても基本上映料50,000円のままです。アップリンクは8日間2回までが基本料金に含まれます。一方、美味しいごはんは1上映ごとの計算で、2回なら66,000円になります。
Q. 何人来るか読めないとき、上映料はどう見積もればいいですか?
A. 「◯人まで一律」タイプなら、その上限人数を超えた場合の追加額を計算しておきます。たとえば夢みる小学校は83人までが50,000円で、84人以上は600円×来場者数です。100人来たら60,000円になる計算です。上限人数のすぐ上で料金が跳ねる作品では、会場の収容人数をその範囲に収めるのも一手です。
Q. いちばん安く上映会を開く方法は?
A. 入場無料・非営利で開き、非営利枠のある作品を選ぶことです。荒野に希望の灯をともすは、ライブラリー価格のDVD 8,910円を購入して所定の申請をすれば、上映料は別途かかりません。ただし主催者が非営利であること、入場無料または資料代1,000円以下で実費を超えないこと、会場が大規模でないことが条件です。
まとめ

映画の上映権料は、1回あたり3万〜6万円が中心帯です。ただし金額そのものより、料金の決まり方(6タイプ)と自分の条件の組み合わせで実際の負担は大きく変わります。
- 集客に自信があるなら「◯人まで一律」タイプが有利
- 集客が読めないなら「歩合」タイプのほうが赤字リスクは小さい
- 入場無料で開けるなら、非営利枠のある作品が圧倒的に安い
- 学校・行政・企業が主催する場合は、専用の料金表を確認する
次の一歩は、開きたい規模を決めて、その条件で総額を出してみることです。収支シミュレーターなら6つの質問で損益分岐点まで出ます。作品がまだ決まっていないなら、天狗シネマの作品紹介記事から探してみてください。上映料と上映会の予定を作品ごとにまとめています。
上映会そのものの進め方(会場探し・機材・告知・当日の運営)は、自主上映会とは?やり方・費用・会場・上映可能な映画まで初心者向けに完全ガイドにまとめました。
※本記事の金額は2026年8月時点で各配給元・権利元の公式サイトに公開されている情報にもとづいています。料金・条件は改定されることがあるため、申し込み前に必ず各公式サイトでご確認ください。また、著作権法に関する記述は一般的な情報の整理であり、法律相談ではありません。個別のケースの最終判断は、作品の配給元・権利者への確認や専門家への相談をおすすめします。
